博物館実習

博物館実習報告

文部科学省により示された「博物館実習ガイドライン」をうけ、本学における博物館実習では、生物系、物理・化学系、地学系、情報・工業系、人文・社会系の5分野5クラスのにわたる実習生の専門分野に沿った実習が行われています。また、生物地球学部では独自に専門分野に応じた野外博物館実習Ⅰ~Ⅹが開講されています。

実務実習

生物系クラスでは、まず春学期に博物館資料論や自然史I、IIなどの講義で学んできた動物標本や植物標本の採集法、乾燥標本、液浸標本、骨格標本、模型、レプリカなどの作製法、標本の保管・整理法などについて実習しました。そのほかのクラスでも専門分野に応じた実務的な実習が行われました。

館園実習

平成29年度の館園実習は、主に夏季休暇中に12館園と1研究機関および学内にて、5~10日間程度の日程で行われました。実習生の多くは、短い間でしたが博物館のスタッフの一員として標本の整理や管理だけでなく利用者の接遇など、充実したプログラムを経験しました。池田動物園、岡山市半田山植物園、岡山理科大学自然フィールドワークセンター、神戸市立王子動物園、神戸市立青少年科学館、周南市徳山動物園、仙台市八木山動物園、つやま自然のふしぎ館、広島市こども文化科学館、兵庫県立人と自然の博物館、福岡市動物園、米子水鳥公園、備前市教育委員会の先生方には、館・園務のお忙しい中、実習生にご指導いただきました。この場をお借りして感謝申し上げます。以下に平成29年度館園実習の感想の一部を紹介します。

展示実習

平成29年度秋学期には、実習生30名が展示を制作し、11月3日に倉敷市立自然史博物館で開催された「第17回自然史博物館まつり」において発表しました。当日は天候にも恵まれたせいか、8千人を超える来館者が来館しました。実習生が製作した展示や解説は、多くの来館者から好評を得ていました。


平成29年度館園実習の感想

神戸市立王子動物園

理学部動物学科 山床 杏里

実習の内容:
私は王子動物園での館園実習で、動物園が行う教育への役割の大きさというものを身に染みて感じた。小学校高学年に向けたサマースクールでは、草食動物の糞を用いた紙漉き体験を行った。小学生高学年にもなると、本や学校での知識から、糞に消化されなかった草が混ざっていることは初めから知っている子が多かった。しかし、園長から、糞は汚いだけのものではなく、飼育員にとっては、動物の体調を知る大事なものであるということ、同じ草食動物でも、食べているものが違えばにおいも違うことなどを聞き、初めて糞を観察している様子が見られた。また、糞の大きさの違いや形、においの違いなどはなぜ違うのかというところをまず考えさせてから答えをいうことで、子供たちの知識がさらに深まったように感じた。他にも二週間の実習の中でこのように感じるときは多く、動物園だからこそ観察し、肌で感じることができ、学校とは違う教育方法に、博学連携を感じた。

実習の感想:
王子動物園での二週間の館園実習では、はじめに動物園での展示、教育事業についてのお話を聞いた。その後、二日間の飼育実習を終え、残りの実習は大きく分けて、小学生のサマースクールの引率と動物ガイドをするための準備にあてられた。最後の一日は、小学生の足型教室のサポートも行った。飼育実習では、子ザル舎と爬虫類館で、餌の用意と掃除を主に体験した。動物たちの餌つくりでは、野菜を手早くカットしていかなければならないが、餌の種類や大きさは、動物たちの個体差や性格、栄養バランスや嗜好性などが考えられ用意されており、毎日餌のバランスは変化していることを知った。動物ガイドでは何人かに分かれて、ガイドする動物の種類、ガイドの仕方、テーマを一から決めて行った。私の班では、資料を調べたり、飼育員さんにお話を聞いたりして、王子動物園にいる二頭のインドゾウのこれまでの歴史を、人形劇にして行った。


神戸市立青少年科学館

理学部応用物理学科 鎌苅 リズキー 洋志

実習の内容:
まず初めに科学館の見学を行い、次に実際にスタッフとして展示室に立ち来館者に展示の説明などを行った。そこで見えてきた科学館の問題点や改善点を話し合った。そしてそれを活かした企画展を企画し、来館者の前で発表するというのが一連の実習の内容である。企画概要としては、既存の展示物にゲームやアトラクション要素を追加し「展示室への導入→楽しむ→学ぶ」の流れを作り出す事を目的とし企画を立てた。具体的には、展示ブースの一部をアトラクション風にアレンジをし、クイズを設置しクイズラリーをしてもらう。最後に偏光板を使った万華鏡づくりを体験してもらうというものであった。企画の狙いとしては、波の性質に興味、理解を深めてもらい、親子間の科学コミュニケーションを促すことを目指すというものであった。また科学館の課題でもあった、展示室ごとに来館者数にムラがある事、展示物の使い方がわからず意図した使い方をされていないということの改善も含めた企画展にした。

実習の感想:
来館者として科学館を見るのと、スタッフとして科学館を見るのでは大きく見え方が違うことに今回気づいた。ひとつひとつの展示の意味、増築や展示物の入れ替えによる、開園当初には想定していなかった展示ルートなどが展示室に立ってみると見えてきた。そして展示物を使って科学を人に伝える難しさや時代によりアップデートされていく科学情報を既存の展示でどのように伝えていくかなどを考える機会にもなった。展示発表では多くの子供やその保護者などと交流する機会があり、子供にもわかりやすく科学への理解を深めてもらうことや大人の方にも興味を持ってもらえるような、誰もが学べる展示を目指して作成をした。今回の実習を通して、工夫次第で普段は人の通りが活発ではない展示スペースに多くの人を呼び込めることや、大人も子供も理解しやすく、科学により興味を持ってもらえる科学館作りが可能なのだと身をもって体験することができた。


周南市徳山動物園

理学部動物学科 福田 晶子

実習の内容:
館園実習1日目はコツメカワウソ、猛禽類の餌やり寝室清掃を行った。猛禽類の餌の下処理としてウズラ、ヒヨコの消化管を取り出した。また、ふれあいコーナーでは来園者と接した。2日目はトラ、ライオンの寝室の清掃、カピバラの寝室清掃、餌やりをした。鳥類の餌やりでは果物を輪切りにしたものを与えた。新施設である自然学習館周辺のガマの植え替え、石垣作りを行った。夕方、トラ、ライオンを寝室に戻した。3日目レッサーパンダの寝室の清掃、朝、昼、夕方の餌やりを行った。餌は笹、果物を与えた。ゾウは寝室の清掃を行う前にゾウの足をブラシで洗い消毒をする作業を行った。餌やりは1日三食であった。4日目は鳥類の水替えを行った後、2日目同様、新施設の植物の水やり、植え替えをした。また、展示施設に設置するネームプレート作りをした。5日目は1日目同様、コツメカワウソ、猛禽類の餌やり、寝室清掃を行った。また、鹿の歯の標本修復をした。

実習の感想:
5日間の館園実習で改めて動物園の役割について学ぶことができた。実習期間中3人の飼育員の方に指導して頂き、初めて飼育員の仕事を体験した。動物の毎日の餌やり、ケージの掃除を欠かすことなく、動物の体調に合わせて餌の種類や量を調整するなど様々なことに気を配られていた。また、動物園の役割の一つである来園者の学びという点も重視されており、新施設は動物のいきいきとした姿を見られるとともに、新たな発見もできるよう工夫されていた。解説文も簡潔に分かりやすく、なおかつ重要なところがしっかりと伝わるよう、飼育員の方々が話し合いをされていた。実習生として飼育員の仕事を体験させていただき、思っていた以上に力仕事で体力が必要とされる仕事であったが、何よりも動物を近くで見て、より詳しく学べる場であった。展示では来園者の反応や会話から、どんなことに興味を持っているのかなどにも注目しながら企画、進行しているのだとわかった。


仙台市八木山動物園

理学部動物学科 紺野 弘毅

実習の内容:
五日の本実習で、主に私は二つの活動を行った。一つ目は飼育員の方の指導の下、飼育動物の調餌を行なった。これは動物の種類や個体の体調を考慮し、餌の種類や餌の与え方などを工夫して与える方法を学んだ。例えば老齢の山羊は歯が摩耗しているため、通常の餌では咬むことができない。このため山羊にペースト状の餌を用意し、できるだけ山羊の近くに配置することで、食べやすいよう配慮した。このように多様な動物種や個体の嗜好・体調に合わせた調餌を行なう方法を理解した。二つ目は獣舎の清掃活動を行ない、基本的な掃除用具の使い方から、動物の動きに合わせた清掃方法などを指導していただき実践することができた。例えば、私は閉園直前に獣舎へ戻りたいロバの移動を阻害するように放飼場を清掃し、ロバに不必要なストレスを与えてしまった。このため私はロバの身体の向きなどを観察し、進行を考慮した清掃を行なうことが出来た。

実習の感想:
私が本実習で特に心掛けたのは、興味・関心が異なる来園者に、どのように動物の魅力を伝えるのかということです。このためには多様な専門知識をあらゆる場面で、適宜活用する能力が必要であると分かりました。私は実習中に来園者へ対州馬について解説を行なったが、内容は馬の体の大きさ等の端的な情報の羅列であり、来園者の興味を引くことは叶いませんでした。担当者からは「これだけは伝えたい」という終着点を定め、来園者の反応に合わせて柔軟に内容を変更すると共に、終着点を意識したガイドが良いと指導を受け、私は内容を改善しました。例えば、在来馬と人との関わりという終着点を定め、小柄な対州馬がどのように人の生活を支えていたのかいう点を解説し、来園者に興味を持っていただくことができました。


広島市こども文化科学館

理学部応用物理学科 野村 洋乃

実習の内容:
館の概要と業務についての説明、科学教室の準備と補助、サイエンスショーや音楽会運営補助、常設展示の点検、常設展示の保守についての説明、プラネタリウムの運営についての説明、プラネタリウム番組の見学を7日間の実習の中で行った。特にプラネタリウムについては番組見学や運営の説明を受けただけでなく、バックヤードの見学をさせていただいた。2016年のプラネタリウムリニューアル以前にスライド作成に使われていた機材や星を映す恒星原版、過去の投影番組の保管場所、投影番組のアフレコスタジオを見学させていただいた。また、建物が老朽化しておりドームが歪んでいるため星や星座線の位置の調整を行っている作業を見せていただいた。さらに、最終課題として星空生解説の原稿を作り、解説内容や言葉の言い回し、文章の構成についての添削をしていただいた。

実習の感想:
7日間の実習は、多くの時間プラネタリウムに携わるプログラムになっていた。実習中、最終日前日までに星空ツアーという星空生解説の内容を考え文章化してくるという課題が出た。課題提出日に添削をしていただいた。添削時に学芸員の方に「科学館に来るお客さんはほとんどが楽しみを求めて来ていて、プラネタリウムは例えるならアトラクションのようなもの。だから、宇宙に関する知識の少ない人と、誰かの付き添いで来たという人もいる。その人達にどれだけわかりやすく伝えるか、興味のない人をどう引き込むかが大事。そのためにも、お客さん達が知っていそうな話題を振るなど、話の中に何かつかみを持ってこないとお客さんは乗ってこない。」と言われたことが印象に残っている。博物館学芸員は、幅広い知識を持って来館者に伝えていくことが仕事であるが、この知識を来館者にどのようにすれば興味を持ってもらえるかを考えることが重要だということが分かった。


兵庫県立人と自然の博物館

理学部動物学科 吉田 咲貴

実習の内容:
兵庫県立人と自然の博物館では、実習生は4つのコースに分かれそれぞれ来館者対応実習と担当研究員による実習を受ける。私が受けたのは来館者対応実習を2日間と鈴木武先生担当の「身近な動植物を対象とした現地調査・資料整理とアウトリーチ事業の実習」を8日間の計10日間の実習である。来館者対応実習とは館内でひとはく研究員によって行われる教職者向けセミナーの補助である。セミナーの主な受講者は兵庫県を中心とした小学校の先生や中学校の理科の先生であり、実習生は主に受付でセミナー費の回収とパンフレットの配布、セミナーの写真撮影や記録、開始と終了のアナウンス、アンケートの回収を行う。鈴木武先生による実習では、野ネズミの調査のため六甲山でシャーマントラップを仕掛けたり、小学校や他の博物館を訪問し児童に向けて昆虫標本等の展示を行ったりした。収蔵庫でシダ植物の標本の整理等もすることがあったが、基本的には鈴木先生の出張に同行し調査や展示の補助をした後、出張先の博物館施設を見学することが多かった。

実習の感想:
来館者対応実習の一環として教職者向けセミナーの補助をする中で、博物館は展示を通してだけでなく、このような指導者向けセミナーでも地域の子どもたちの学習に携わっていくことができると感じた。そしてまた真剣にセミナーを受けられる教員の方たちを見て、博物館と学校が連携を深めることでより良い教育を子ども達に受けてもらうことができると思った。出張展示等の実習では、子ども達が熱心に昆虫と触れ合い観察している姿を見て、机の上で学ぶだけでなくこのような体験的な学習こそが子どもたちの興味関心のきっかけになり後の学習へ繋がっていくのだと思った。大人と子どもどちらも相手にしたことで感じたのは、博物館で学んだことを生かす方法は人によって様々であるが博物館はその様々なニーズに答え相手が面白いと思う教育活動を行わなければいけないし、実際に可能であると思う。また地域の歴史、文化、自然など多くの資料を大切に保管している博物館は、過去の財産を、教育を通して未来に繋いでいくことができると感じた。


福岡市動物園

理学部動物学科 田中 美咲

館園実習の内容:
8月2日から6日までの5日間実習担当者の飼育員さんの元、実習を行った。飼育員さんはアジアゾウ、オラウータン、シロテテナガザル、レッサーパンダ、オウギハト、フウチョウの担当であった。担当動物が決まっているため実習期間後半は同じことを繰り返して行った。2人の飼育員さんが担当であったのでゾウを除く他の動物は2種ずつ日替わりで行った。毎朝、動物の寝室掃除、餌やりを9:30までに行い、複数で行わなければならないアジアゾウの寝室掃除、餌作りを行った。アジアゾウは危険な動物である上、高齢のため2人以上の飼育員さんがいる中で行わなければならないものであった。ゾウが終わるとそれぞれの担当動物の元へ行き、夜の餌と次の日の餌作りを行った。ここまでの作業を行うとお昼休憩の12時頃になる。昼休憩の後、15時まで実習生は最終日に発表するテーマ研究についてそれぞれで作業を行った。私は園内の回り方の提案、QRコードを使った動物紹介について作成した。その後は担当者の元に戻り動物を寝室に戻し、展示室の掃除、餌やりを行った。この作業を行うと終了時刻の17時になる。最終日のみ13時30分よりテーマ発表を飼育員さんの前で行った。

実習の感想:
担当者の飼育動物が哺乳類ばかりで凄く貴重な体験ができた。餌作りの際は飼育動物の食べ物について知ることができた。ハイブリット種のことや動物園ごとの取り組みを聞くことができた。実習中興味深かったのは動物ごとの餌だ。ゾウには白米、オラウータンにピルクル、ヨーグルト、ゆで卵など驚くものが多かった。普段与えている餌では賄えない栄養源を代用して与えているとのことでとても興味深かった。寝室掃除を行っている際に食べている餌の違いからフンの色や匂いが違ったことに対してこれほどまでに違うのかと実感した。特にレッサーパンダが面白く、ペレット、笹、リンゴの3種の餌しか食べていないので食べた餌によってフンの色が分かれていたことは大変興味深かった。また、フンのにおいが笹団子の笹のにおいがして全く臭くなかった。猿類は飼育室と寝室を行き来するのに人の声に反応して行動しており知能の高さを実感した。実習中イベントを行うときの来園者の望みと動物のことを考えたものを作るのは難しいのだと実感しました。


米子水鳥公園

理学部動物学科 石谷 裕美

実習の内容:米子水鳥公園での館園実習では大きく分けて3つのことを体験した。イベント補助、調査、標本づくりである。1つ目のイベント補助は夏休み期間とあって様々開催されるイベントの運営補助である。室内イベントのダンゴムシレースや缶バッジづくりなどの工作コーナーでは、コーナーに常駐し声かけや方法を教える作業補助などの対応を行った。野外イベントの園内探索やバッタとり大会などでは、参加者の最後尾に付いて指示や様々なフォロー、安全管理などを行った。出張イベントにも同行した。2つ目の調査は、観察池の営巣地調査および植生調査、バンディングである。池ではボートで一周しながら巣の記録や水質調査、水草の同定など行った。ヨシ原ではかすみ網を張り、渡り鳥を捕獲、足輪の装着と各種計測・記録を行った。3つ目の標本づくりは、シラハラという鳥を用い仮標本づくりを行った。各種計測、ラベルづくり、乾燥手前までの作業を行った。

実習の感想:
10日間の実習期間中、主に教育活動、調査、保存に携わった。教育活動に関しては未就学児から高齢者まで幅広い年齢層に対して催しやクラブとして行われており、私はその補助をした。活動中の時間と安全の管理はもちろん、年齢に合った内容や言い回し、事前準備の大切さを改めて認識した。活動を通して参加者が何も持ち帰ることができなければ意味がない、ということも教えていただいた。調査に関しては園内で見られる鳥や植物の調査に同行した。渡り鳥の調査では捕獲網から外したり計測したりの慣れない作業な上、鳥が暴れるので苦労した。保存に関しては鳥の仮標本づくりを体験した。剥皮・除肉は集中力と根気を必要とする作業だった。標本が完成し、職員の方に「これなら資料として残していける」と言われた時はとてもうれしかった。普段はこれらの作業を一人で行っているのだという。データの収集や残してくための資料製作の大変さを、身をもって体験した。

 

ページトップへ